王子様の弱みを握っただけなのに。



その日、家のポストに例の手紙が新たに入っていた。



『僕のために彼を捨ててくれたんだね。
そうそう彼は沙也加ちゃんのことが好きだからね、あの顔を見られて嬉しかったよ。
本当にありがとう。これで僕たちはずっと一緒だね。
これからも僕たちを邪魔する奴がいたら、僕が排除するから安心してね。
あとこれを読んだら僕のメールアドレスに送って。
……………@……』


「いや……」



こぼれた声は情けなく震えていて、部屋で読んでた私は思わず手紙を壁に向かって投げつけた。



今日の行動を見られた……?


しかも話の内容まで把握しているってことはそんなに近くで私を見てたの……?


ずっと一緒……? 冗談じゃない!


安心どころかあまりの恐怖で体が震えて鳥肌が立つ。



助けを求めたい。


今すぐにでも、この恐怖から逃げ出したい。



だけど中学の苦しい思い出が頭の中を張り付いてくるんだ。


もしかしたら助けてくれるかもしれないという期待が消えていってしまうんだ。



私には……味方がいないんだ。