やっと私は解放されるんだ。これ以上聞いていられるもんか。
しかし、無視して歩夢の横を通り過ぎようとしたら、片手を強く掴まれてしまった。
「……もう一回俺の目を見てその言葉言えよ」
掴んだ手を強引に自分の方へ引き寄せて、真剣な表情をして私の顔を覗き込んだ。
私の瞳の奥底まで見られているような気がして居心地が悪くなる。
「関わらないで……これでいい?」
呆然とする王子様を置いていって、私はまた歩き出したのだった。
後ろが気になってしまう。だけど後ろを振り返ることなどできない。
今あいつはどんな顔してるんだろう。
私が見たい表情でもしているのかな。
いや、でも私は……そう考えたところでハッとなって歩く足を止めた。
どうしてだろう、あいつの嫌がる顔を見たくないと思うのは。
きっと罪悪感という情が入ってしまっただけだ。
人を傷つけるためには……罪悪感を捨てなければいけないのだから。
今すぐに歩夢に謝りたくて仕方なかった。



