あいつに会ったら絶対に遠慮なしで殴ってやりたい。


そして誰かさんのせいで授業中もずっと首筋を抑えなくちゃいけない羽目になって、全く集中できなかった。



「お、沙也加ちゃんじゃん。歩夢大丈夫だった?」



放課後になって、保健室で絆創膏を貰いに行こうとした私はまたもや渉くん……ではなく中家くんと遭遇した。



「うん、なんとか。ありがとう中家くん」


「うわぁ、独占欲全開。爽やかなのに、めっちゃ意外なんだけど。


「そう、かしらね……」



中家くんは彼の裏の顔を知らないみたいだから、意外なのも頷ける。


しかし裏の顔を知った私にしてみれば、意外じゃなくてむしろ当然のことのように思える。



「まあ、歩夢のためなら俺も志村さんって呼ぶか」



歩夢のためならって……どんだけ良い人なの。


良い友達持って良かったね、王子様。



「なんか申し訳ないわ。せっかく名前呼んでもらえたのに」


「はは、その気持ちだけでも嬉しいや」



これぞ本当の王子様……なのではないか?