「……じゃあ、渉くんの名字教えて。
どうしてもっていうなら次から名字で呼ぶから」
「中家。アイツの名字、中家だから。
次からそう呼べよ」
「……っ」
気にくわない。
なんでこんなにドキドキしてるのよ。
どうしてあなたはサラッと言えるのよ。
「……それが人様にお願いする態度なの?
もっと上手におねだりしてみたら?」
自分の真っ赤な顔を見られたくないから、歩夢の顔を見ないで少しだけ乱暴に言い放した。
歩夢は当然顔をしかめて嫌がる。
「は? 誰がそんなこと……」
「歩夢が嫌ならいいんだよ?
中家くんじゃなくて渉くんって呼ぶから」
まるで歩夢を試すような言い草。
私がそう言えば上手におねだりをしてくるとわかってる。
「わかったよ! その、だな……」
「うん」



