私の言い分を無視して連れてこられたのは人気のない廊下だった。


人がいないから心配はないけど、万が一のことを考えたら他の場所にした方がいいと思う。


でも、歩夢の裏モードをバレて絶望する気持ちを味わってもらうのもひとつの手だと思い、口をつぐんだ。



「で、命についてどんなこと話すの?」


「……お前、頭の回転速いのかバカなのかどっちかにしろ」


「え、違うの? 人権より大事なものって命の他に何があるの?」



私の言い分にため息をついてしまった歩夢。



「なんで渉のこと名前で呼んでるの?
しかも渉まで沙也加のこと名前で呼んでるし」



いきなり何を言いだすかと思えば、素っ気なく言う彼の姿を見てこれが不機嫌だった原因だと察知した。


……え、なに、そんなことで不機嫌になったの?



「いや、だって渉くんの名字知らないし」


「沙也加の口から俺以外の男の名前を出さないで。
知らないとかどうでもいいから」



な、なんて暴君な……!