暗黒王子と危ない夜【after】

あまりにナチュラルに握っているからすぐにはわからなかった。


そういえば、本多くんは右手を負傷していた。しかも、あたしのせい。

袖口からはまだ包帯が覗いていいる。



「そうだ、っ、右手使えないんだよね。ほんとにごめんなさい……」


あのときのことを思い出して急に申し訳なくなる。
階段から落ちたあたしを庇った傷。



「大丈夫。おれ、もともと左利きなんだよね」

「、……え?」



ほら、と手先で器用にペンを回してみせる。



「右のほうが都合がいいから、普段はそっち使うようにしてた」

「そう、なの? ……都合がいいって?」

「左利きが都合悪いってわけじゃないけど、隠していれば、いざっていうときの切り札になる……とか、かな」



なんとなく理解できる。

右手を負傷したら、利き手だと思っていた相手は油断する。そうすると、不意を突くことができたりするのかもしれない。


……なんて。

本多くんが普通の生活をしていたなら、こんな思考も生まれるわけはないのに、と少し気持ちが沈んだ。



「だから、右の方を折ったのもわざとだよ」