本多くんの指先がゆっくりとあたしの頬をなぞる。
そこに、一度だけ唇が触れた。
さっきまでぼんやりしていた景色の輪郭が少しずつ、形あるものに変わっていく。
「おれ、相沢さんが思うよりずっと汚い人間だよ」
あたしを抱きしめる腕に力がこもる。
「だって……今日はもう、帰したくない……」
すべてがようやく現実になった、その刹那。
本多くんの体が、ぐらりと傾いた。
「っ、本多く───」
慌てて抱きとめるも耐えきれず、そのままふたりでベッドになだれ込む。
改めて触れるとすごい熱だ。
市川さんを呼ぼうと体を起こせば、「行かないで」と、小さな引き止められた。
おもむろに伸びてきた指先は、あたしに触れる前に力を失って、ベッドへ落ちる。
でもこの距離を埋めるための言葉は、たぶん、もう要らなかった。
【after】−完−
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【final】再公開予定です
2025.07.07



