暗黒王子と危ない夜【after】


静かな声に心臓がどくりと脈を打った。



「ねえ、───ほんとにいいの?」


ふと、声のトーンが落ちた。こちらを見据える暗い瞳からは冷たさすら感じる。

だけど、突き放すような視線とは裏腹に、あたしを抱きしめる腕は壊れ物に触れるように優しかった。



「……うん、いい、よ」

「だめだよ、そんなに簡単にうなずいたら」

「簡単なんて、そんなわけ、」



それ以上は言えなかった。

さっきよりもずっと近い。吐息が触れそうな距離に、くらりと目眩がした。



「好きだよ。……相沢さんのことがずっと好きだった」



耳元に落ちたその声は、夢みたいに柔らかくて現実じゃないみたいで。
体温も鼓動もすぐそこにあるはずなのに、どれも輪郭があいまいで。



「ほん、とう……?」


そう言って見上げた先で、今度こそ、たしかに視線が絡んだ。