暗黒王子と危ない夜【after】


本多くんの指先に力がこもった。
憂いをはらんだ瞳の中に囚われる。


痛いくらいに胸が締めつけられて呼吸がうまくできない。


聞き間違いじゃなければ、本多くんはあたしと一緒にいたいって言ってくれた。


だけど、こうやって自惚れたあとに、結局また傷付くことになるんじゃないかって思うと怖くて。

そうやって傷付くのが怖いと思ってしまうほどに、あたしは、この人のことが好きで……。



──『約束して』

いつかの本多くんの声が頭をよぎる。

──『俺が退院して学校に戻ってきたら、ちゃんと教えるって』



そうだ。

本多くんはずっと、あたしの言葉を待ってくれてた……。



きちんと言わなくちゃ。灰田くんのこともぜんぶ話して、誤解を解いて。

それから、あたしの気持ちを……。


頭の中がぐちゃぐちゃだ。

気持ちだけが先走って、口にすべき正しい言葉がわからない。

代わりに、本多くんの手を強く握り返した。


その刹那、目の奥が熱くなる。



「…………好き」


涙といっしょに、そのひとことだけがこぼれ落ちた。