暗黒王子と危ない夜【after】


しかたなく灰田くんとふたり、部屋の近くで待つことにする。

だけどその数秒後──。




「相沢さんにも声かけたけど、“本多くんには会いたくない”ってさ」



聞こえてきた中島くんの声に、えっ?と声をあげそうになる。



「灰田も、相沢さんのこと相当気に入ってるみたいだし、やばいんじゃないの〜?」


おもしろがって煽るような口調。

どこかわざとらしく。大きな声で、灰田くんとあたしに聞かせているようにも感じる。



「ていうか。ぶっちゃけエナちゃんのことはどう思ってんの。お前がヘンに優しくするから、相沢さんも誤解してんじゃん」



耳をふさぎたくなった。

本多くんの答え次第で、あたしは立ち直れなくなるかもしれない。


だけど、“逃げるな” っていう三成の声が蘇ってきて、その場でじっと耐えた。



「エナは、深川のことがまだ好きだよ」


抑揚のない声からは、本多くんの感情は読み取れなかった。