暗黒王子と危ない夜【after】


拭おうと伸ばした手を本多くんが掴みとる。



「相沢さん、」

「っ、離して……」



見られたくない。こんな表情。

月明かりも街灯も、全部なくなればいのに。




「離、して、」



情けないほど震えた声が響いた。

力はわずかに緩められたけれど、完全に解放されることはなかった。



涙を隠すことすら許してくれない

……ひどい人。




「ちゃんと最後まで聞いて、」


あたしとは正反対な冷静な声。
取り乱している自分との温度差が悲しくなる。



これ以上何を聞けっていうんだろう。

もう十分伝わったのに。



こんなに傷ついている自分が嫌だ。
本多くんへの想いの強さをいやでも自覚してしまう。


逃げたい。

こんなことなら、もっと遠くへ連れて行ってほしかった。




「……灰田くん、は」



気づけばその名前を口にしていた。


あまりに小さくて聞き取れなかったのか、本多くんが「なに?」とのぞき込んでくる。




「……灰田くんは、……あたしだけにしか優しくしないって、言ってくれた、のに」