「灰田」
「ん?」
「ありがとう。あの騒ぎの中で相沢さんを一人にさせたくなかった 」
「……嫌味なくらい冷静だな」
「そう見えるように振る舞ってるだけ」
それから、少しの沈黙。
「優しくすんのは一人だけにしとけよ」
灰田くんが背を向けた。
その背中はすぐに闇に消え、見えなくなる。
暗がりに二人きり。
視界の端に映っていた街灯がふっと消えて、目の前に本多くんが立ったのがわかった。
「今からおれが言うこと、信じる?」
落とされた声。
握りしめた手に自然と力がこもった。
「信じなくてもいいから聞いて」
抑揚のない声があたしの不安を掻き立てる。
どんな覚悟をすればいいかわからないから。
聞いて傷つく内容なら、秘めたままにしておいてほしいと思った。



