「万が一、七瀬君のこと嫌になったら俺のとこ来なよ」
街灯に照らされた、いたずらっぽい笑顔に。
ふと、黒い陰がかかる。
思わず目を見張った。
「……あー、いつになったら出てくんのかなって……。待ちくたびれたよ」
灰田くんを静かに見下ろすひとりの人物。
腕に巻かれた白い包帯が闇に浮き出て見えた。
──────うそ。
「エナをすぐに突き離せなかったのって、右手使えなかったからだろ」
灰田くんが立ち上がる。
「で。 追いかけてきたくせに、すぐに声を掛けなかったのは? ……相沢サンの気持ちを確かめたかったから? 自分のいないところでこの子が何て答えるのか。本音を聞きたかった? 」
本多くんの表情は影になって読み取れなかった。
胸に手を当てると、自分の激しい心音が聞こえる。



