「あーあ。 こんな近場に連れてくる予定じゃなかったのに。どーせすぐ見つかるし。 自ら当て馬になるって相当物好きだろ」
どんどん話が進んでいく。
ひとりごとなのか私に話しかけているのか。
相づちを打とうにも、どんな反応が正しいのかもわからないから、ひとまずは同じ夜空を見上げることにする。
満天とまでは言えないけれど、雲の隙間からは小さな光が点々と輝いていて。
どこまでも続いていて広いはずなのに、ここが一つの箱庭で、周りから切り離された空間のようにも感じる不思議な錯覚に陥った。
じっくりと空を観察するのは小学生の理科の授業以来だなあ、なんて思っていたら。
「七瀬君とどこまでやった?」
なんでもないことのように、さらりと突然。
意味を理解すると、爆弾が投下されたかのごとく、心臓が激しく脈打ち始める。
「えっ……? あ……っと、」
わかりやすく動揺するあたし。
「七瀬君、まーじで上手いだろ」
答えてもいないのに次の言葉が降ってくるから、早くも頭がパンクしそうになる。
「なんせ、生まれも育ちも西区の繁華街だからな。 中学んときから、女をターゲットに情報収集するようなシゴトを慶一郎さんに任せられてたし」
不意に始まった本多くんの話。
新しく耳にする情報が多すぎて整理することがままならない。
だけど、ただでさえいっぱいいっぱいだったあたしの不安を、さらに煽る内容だということは理解できた。



