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「この公園は中島の縄張りだから、部外者が入ってくる心配はない」


連れて来られたのは倉庫から数百メートル離れたところにある広場だった。

ぽつんぽつんと並んでいる街灯に、古びた自動販売機と比較的新しそうなベンチが照らし出されている。



「ほんとはもっと遠くに連れてくつもりだったけど、椎葉君にあんなこと言われたらね」


そう言うと、灰田くんは肩をすくめてみせた。




「そこ座りな。ゆっくり話そうぜ」



促されるままベンチに腰をおろす。



「……泣きやんだ?」


のぞき込まれ、肩がビクリと反応する。


ギリギリのところで耐えていたはず。
目に雫は溜まっていたかもしれないけれど、流れ落ちることはなかった。


「……泣いてない、です」


最初から。
そう意味をこめて返事をする。



「そ? 勘違いだったか。 暗くてあんま顔見えてなかったしな」



灰田くんは姿勢を戻して、後ろにもたれかかった。

私との距離は20センチほど。肩がぶつからないくらいの適度な距離を保ってくれている。