暗黒王子と危ない夜【after】







「……中島がいるとか聞いてない」



市川さんのお店に着くなり、立っていた人物を見て露骨に嫌な顔をした本多くん。

あの夜は『琉生』って下の名前で呼んでいたはずなのに……。



「俺だって椎葉がコーラくれるって言うから来ただけで、成績最底辺の落ちこぼれなんかに勉強教える義理も時間もねぇーんだよ」

「は……。喧嘩なら買うけど」


「別に売ってねーけど、どうしてもって言うなら相手してやらんこともない。体なまってる雑魚なら3秒で勝てる」

「じゃあ来なよ。なまってるのはどっちか、やればすぐにわかるから」



このふたりって、いつもこんな感じだったっけ……?

目を丸くしてやり取りを見守る。


心なしか、本多くんの声が明るい気がするし、表情もいきいきしている気がする。

無邪気というか。

いい意味で……少し幼い。



これが本来のふたりだったんだなと思うと、よかったなって安心する。

過去のしがらみから解放されて、お互いに素を出し合って。きっと、これからはずっと笑い合えると思うから。