三成の声が響いた直後、暗がりからセーラー服姿の女の子が飛び出してきた。

三成の手を振り切ると、スカートを翻しながら本多くんの元にまっすぐに駆けていく。



「いた! 会いたかった七瀬……っ」



背中に回された手。

本多くんの胸元にうずめられた小さな顔。



周囲からどよめきが起こった。

一部の人たちは身を乗り出して、近づいていく。

「ヒュ〜」というような歓声も上がって、胸に刺されたような痛みが走る。



本多くんは……抱きしめ返すことはしないけれど、体を離そうとする気配もない。

見ていられなくてうつむいた。



急にみじめになる。

自分がここにいる理由がわからなくなる。

期待してバカみたいだって。

来なきゃよかったって。



隣で原野くんがうろたえ始める。気を使わせてしまって余計に悲しくなった。


しばらく下を向いて涙に耐えていたら、誰かがあたしに近づいてくる気配がした。

「あっ」と原野くんが声を上げたのが聞こえたかと思えば。



「久しぶり、相沢萌葉サン?」


直後、肩を優しく抱かれる。

そこにいたのは意外な相手だった。



「タイミングが狂ったね。七瀬君は、あんたをメンバーに顔通ししたくて連れてきたのに。 これじゃあ皆、逆に勘違いするよな」



どうして、灰田くんが。
目を丸くして見上げれば、にこっと笑顔を見せられる。


「けど、ちょうどよかった。 俺あんたに会いたいって思ってたんだ。……俺なら、よそ見せずあんただけに優しくしてやれるよ」



抱きしめられる直前、
こちらを見た本多くんと目が合った

─────ような気がした。