イカツイ見た目の男子に敬語を使われるなんて、なんだか不思議な気分。

とりあえず名乗られたのだから名乗り返さないとと思い、原野くんと向き合う。



「あたしは、相沢萌葉……です。えっと……」


いけない。また人見知りを発動してしまった。
口ごもるあたしを原野くんがのぞきこむ。



「萌葉、さん? ですか?」


下の名前にさん付け。
またしても呼ばれなれない響きに、胸の奥がむずがゆくなる。



「萌葉さんって、あれっすよね。 たしか前に一度、青藍の倉庫に来ましたよね」

「っあ、そう、です」

「あん時オレ、琉生さんか三成さんの彼女だって思ってました」

「、え?」


青藍にお邪魔したとき。

たしかあの時も、三成の彼女かと聞かれた記憶がある。


中島くんか、三成の彼女。


──────本多くんには
エナさんがいるから?


ずしりと重たいものがのしかかる感覚がした。

すぐにこんなことを思うのはよくない。
考えるな、と言い聞かせて笑顔をつくった。




「けど、違ったんすね」

「……違った?」

「七瀬さんにすげー大事にされてるもん」