去っていく車を眺めながら、「かっけぇ…」と、誰かがため息に似た声をもらす。
それが小波のように広がり、しだいに騒がしくなってきたとき、ひとりの人物が一歩まえに出て声をあげた。
「静かにしろ、そろそろ集会始めんぞ。幹部は前に出てこい……それ以外のヤツはテキトウに見物ってことでいいな?」
気だるげな命令口調。
聞き覚えがある。
灰田くんだ。
正直、こうやって全体に指示をするタイプではないと思っていたから少し意外だった。
だけど中島くんと対等に接していたことを考えれば、黒蘭で相当な力を持っていることは明らか。
「黒蘭の総長代理、灰田恭平。今夜は初めだけ、俺がこの場を取り仕切らせてもらう」



