「コッチの世界に流れてくる情報は操作されたものがほとんどだ。結論は同じでも、伝え方次第で与える印象はおもしろいほど変わってくる。知ろうとするのは事実だけでいい。 それらに付きまとう他者の意見、世間の評判は全部捨てて、自分で考えるんだ。本質を視るためにね」



隣に立つ本多くんも中島くんも、前に立つ背中を、口をかたく結んでじっと見つめていた。


「情報は便利だけど、それ以上に厄介なんだよ。それでも、情報ほど強い武器はない。うまく使いこなすことができればね」


本多くんが、中島くんに視線を流したのがわかった。ほぼ同じタイミングで、中島くんも本多くんを見る。

お互い何も言わないけれど、なにか同じことを考えている、もしくは思い出している。そんな風に見えた。


「大きな事件は、それ以上に重大な何かを──知られてはいけない何かを隠すためのカモフラージュかもしれない。 容易く手に入れられる情報は、それに夢中にさせることで本質を見えなくさせるための罠かもしれない。……慎重に判断して、それを逆に利用してみせるくらいの、ずる賢さを身につけておきなさい」