暗黒王子と危ない夜【after】


暗いのに、目が合ってるってはっきり分かる。

あたしが逃げないように、下からのぞき込んで離してくれない。

返事を催促するように、本多くんは少しだけ首をかしげた。



「嫌?」


そんな聞き方はずるいと思う。


嫌じゃない。嫌なわけない。



「じゃー……こういうのは?」

「こう、いうの?」

「おれが英語で100点とれたら、ご褒美として一緒に出掛けてくれる、とか」

「……え、ぅ…」


わかりやすく動揺した。


そんなこと、なんでさらっと言えるんだろう。


余裕たっぷりに見えるけど、どこか不安そうに見つめてくるから、慌ててうなずいた。



「ほんと? ありがとう、勉強がんばる」

「っ、……うん」


胸の奥がぎゅう、と狭くなる。