暗黒王子と危ない夜【after】


中島くんはスマホを触っていて、慶一郎さんは運転に集中している。


「勉強、付き合ってくれてありがとう」


こちらに視線を戻した本多くん。

あまりの近さに声を出すことさえできず、コクンとうなずいて返事をする。



「お礼したいし、近いうちにどっか行かない?」

「……えっ」



──それは、あまりに唐突で。

まさかの言葉にうわずった声が出た。



「っ、いやそんな、気を使わなくていい、……」


ドクドクと激しく鳴り響く心音に、自分の声がかき消されそう。



「気使うとかじゃなくて、おれがそうしたいって思ったから誘ったんだよ」

「でも……」

「……。じゃあ、言い方変えるね」

「え?」



本多くんの視線から逃げてばかりだったのに、次の瞬間とらわれて動けなくなった。


「お礼っていうのは半分口実。ほんとは……ふたりで会いたいだけ」