もはやどこを見ていいか分からない。
ただでさえ人見知りで人と話すことが苦手なのに、好きな人と、だなんて……。
中島くんがつくってくれたチャンスを無駄にしないと決めたばかりなのに、早くも意志が薄れていく。
桃香や伊代だったら、こんなときは自分からガンガン話しかけて距離を縮めるのに、どうしてあたしはできないんだろう。
狙った男の子は100発100中のふたりみたいに、とびきり可愛ければ少しは積極的になれたのかな……。
そうやって卑屈になりはじめたとき、ふと隣で影の動く気配がして。
そっと袖を掴まれれば、自然と向かう合うかたちになる。
視線がしっかりと絡むと、本多くんはわずかに体を寄せて、それからチラリと前の座席に目を向けた。



