何やらおどろいている様子。
あらゆる角度からまじまじと箱を見つめている。
「待って、まじのレアもんじゃん。90年代旧タイプのバニーデザイン……」
ここからだとよく見えないけれど、どうやら端のほうにうさぎがプリントされているらしい。
「そう、それマニアの中じゃ有名なんだ。とあるルートで入手したんだけど、箱だけはちゃんと本物だった」
「もらっていいんですか? ありがとうございます!」
両手で丁寧に扱いながらうっとりとした表情を浮かべる中島くん。
中島くんの中で、その価値は限定品の煙草というより、うさぎがデザインされている部分にあるんだと思う。
コーラを手にしているときもそうだけど、中島くんは好きなものを目の前にすると途端に雰囲気がやわらいで、無邪気な少年みたい。
「さて、そろそろ行こうか。 黒蘭の倉庫で集会やるんだろう」
人さし指で車のキーをひと回転させると、慶一郎さんは背を向けて、扉の方に歩き出した。
あたしたちは市川さんにお辞儀をしてからお店を出て、黒い高級車に乗り込む。
「俺は助手席〜」
中島くんがにこにこしながら前ドアを開けたから、思わず足が止まってしまった。
これじゃあ、本多くんとあたしが必然的に後ろの席に座ることになってしまう。



