誘われるように、吸い込まれるように。
本多くんしか見えなくなった。
手元の教材やノートなんて目に入らない。
耳にかかっていた髪がはら、と落ちてきて、本多くんの指先がそれに触れる。
「髪、綺麗だなって、ずっと前から思ってた」
瞼を伏せて、そんなことを言いながら。
するりともてあそんで、離れていく。
体中が熱くなるのを感じながら、その裏で、やっぱり異性の扱いに慣れてるんだな、なんて考えてしまう。
「……ごめん。勉強しなきゃいけないね」
視線がノートに戻った。
勉強をしに来たんだからあたりまえ。
少し残念だって思っちゃだめ。
この先を期待するのはだめ。
分かってるのに、どうして……うなずけないの?



