あのときの──カラオケ店での出来事を一から思い出してみる。
牧野に襲われかけて、本多くんが助けに来てくれた。
そのあと、裏口から逃げるために非常階段に向かって。
制服がはだけていたあたしは、それを本多くんに見られたのが恥ずかしくて、手を振り払ってしまった。
そして薬のせいもあって、体のバランスをとることができずに、そのまま──。
本多くんが受け止めてくれたのは覚えてる。
感触もしっかり。
だけど、あの時はもう薬のせいで頭がくらくらしていて、体も熱くて。
よくわからないまま意識を手放した気がする。
気づいたときには、三成の家のベッドにいたから……。
「あたし……階段で落ちた直後からの記憶、ない……かも」
遠慮がちに口にすると、なぜか本多くんは一瞬、固まって。
「……ほんと、に?」
「う、うん」
「……あれでもう、嫌われたかと思ってて」
「えっ? 嫌、われ……?」
あたしは何か、本多くんにいやなことでも言われたり、されたりしたの……?
どうしよう。ぜんぜん覚えてない……。
「あんまり目合わせてくれないのも、あのときのことが原因かもしれないって、ずっと考えてた」



