包帯の巻かれている腕を見つめて、本多くんはそう言った。
「あのとき階段で、咄嗟にどっちの手をつくか考えた。両方同じくらい使えるようには鍛えてるけど、右を折ればあっちの警戒心も薄れるかなあ、と」
あっち、とは、たぶんあの男が支配していた黒蘭のこと。
本多くんはあたしに罪悪感を残さないようにしてくれているんだ。
右手を折ったことが結果的に有利に働いたんだって。だから負い目を感じる必要はないんだって。
「助けてくれて本当にありがとう」
前にも一度お礼を言った気がするけど、本多くんには、何回伝えても足りないくらいだから。
それに、まだ、口にできてない気持ちもある……。
控えめに本多くんを見つめると、
「いや。……薬飲まされたとき……ああいう助け方しかできなくて、ごめんね」
「……くすり……?」
「怪我なく助けられてよかったけど、あの後、楽にさせてあげるためとはいえ、あんなことして……」
ふと目を逸らされる。
本多くんが何を言いたいのかわからない。
──あの後?



