靴の共同開発についての打ち合わせは後日にしようと虎之介と萌菜を帰らせた。
 再び静けさが戻ったリビングで谷は澪へ謝罪の言葉を口にした。

「弟が悪かったね。
 仕事の話をするつもりだったが、澪のことを話したばっかりに話題が変な方向へ行ってしまって。」

「いいえ。虎之介さんがお兄さん想いだということが存分に伝わってきました。」

「うん、少し重いくらいだ。」

 いつものように茶化して話す谷へ澪は質問を向けた。

「私の、痣のことは言わないんですね。」

「澪は俺が責任を持って部外者にはしない」とまで言った谷が澪の痣のことを虎之介へ言ってしまえば、簡単に澪との仲を認めさせることが出来ると思ったからだ。

 澪としてはそんな形で認めて欲しいと思っているわけではなかったが、谷の言動を不思議に思った。