和やかな雰囲気のまま仕事を終わらせた私達は、駅まで一緒に行くことになった。

とりとめのない話をしながら歩いていくと。

「…あ」

光が車道の向こう側の歩道を見て、小さく声をあげた。

私もそちらに視線を向けると、思わず足が止まった。

…胸が痛んだ。

「…最近よく見かけるんだよな、あの組み合わせ」
「…そ、そうなんですか?」

…藍原と、専務の娘で、専務秘書。

並ぶ二人はあまりにお似合いだった。

「…明日香ちゃん大丈夫?」
「え?」

「顔が強ばってる」
「そ、そんな事ありませんよ。行きましょう。もうクタクタです」

そう言うと、早足で歩き出す私を光は急いで追いかけて、手を掴んだ。

「明日香ちゃん、もしかして部長の事」
「え?何ですか?」

光の言葉は理解できないと言った顔で見つめると、光はポリポリと頬をかき、私の手を引いた。

「まだ、気づいてないなら、俺にも付け入る隙はあるってことだよね」

「…早乙女さん」
「何?」

「手を、離してもらっても良いですか?」

切実な顔でいうと、光はごめんと言って手を離した。