「車がエンストしたから、しょうがないんで、歩いてきたんだが。
 今、バスが来たから、ちょうどいいと思って」
と空いているバスの一番後ろの席で、男は言う。

 海辺の町ののんびりとしたそのバスの中には、ひなたぼっこをしているような顔で、窓の外を眺めているご老人しかおらず、鈴たちを、

 この人たち、なにっ?
という顔で見ているのは、運転手だけだった。

「……ところで」
と男はウェディングドレス姿の鈴を上から下まで見て言ってきた。

「ところで、お前は誰だ」

 それは、私のセリフですーっ!
と鈴は叫んでいた。