尊が職場に戻ると、ちょうど事業部に来ていた支社長が早速に嫌味を言ってきた。
「遅かったな、島流し。
今日もロールスロイスでご出勤か」
「はい。
まだ車買いに行く暇がないので」
と言うと、田上《たのうえ》支社長は、ちょっと呆れた顔をし、
「そういうところが庶民と違うと言ってるんだ」
と言ってきた。
恰幅のいい田上は、支社長にしては、まだ結構若いらしいので、相当なやり手なのだろうとは思うのだが。
仕事に戻ろうとすると、田上は、
「おい、清白。
なんで素直にうちの支社に来た」
と訊いてくる。
横で支社長の秘書である若い男が、ハラハラしながら、こちらを見ているが、尊は、この支社長、いい度胸だなあ、と思っていた。
この清白の会社で、他に呼びようがないとはいえ、
『おい、清白』
とか。
変に、こびへつらわれるより、いっそ、清々しいな、と思う。



