武田父が、
「長距離移動するのに、尊様と鈴様になにかあってはいけませんので」
と少々のことは大丈夫そうな、ロールスロイスを勧めてきたのだ。

 社宅にとめられないロールスロイスをやっと持って帰って、ほっとしていた尊は渋い顔をしていたが、武田執事長は、

「いえっ。
 わたくし、そこだけは譲れませんのでっ」
と主張してくる。

 いや~、この車の方が、街中の狭い通りなんかは曲がりにくいんですけどね~。

 と思いはしたのだが、それが武田執事長の親心だろうと、二人はロールスロイスで行くことにした。

 ちなみに、本当の尊の親は、あっさりしたもので、
「あら、もう行くの?
 今度はいつ帰るの?

 来年?」
と二人に訊いてきた。

 いや……お盆には帰ります、お義母さん。

 っていうか、貴女は誰なんですか。