こういうの、自分の身には絶対起こらないことだと思って見てたな、映画とか漫画とか。
そんなことを思いながら、鈴は冷たい鉄格子をつかんでいた。
目の前は廊下とコンクリート打ちっぱなしの壁だ。
そして、右手の角を曲がったその上が、地上に続く階段のようだった。
地下と地上をつなぐ扉は厚いらしく、さっきから叫んでいるのだが、今のところ、誰からも返事はない。
「尊さーん。
窪田さーん。
数志さーん」
ふたたび、叫んでみたが、やはり、自分の声が反響するだけだった。
「尊さーん。
数志さーん。
窪田さーん」
おそらく、呼んでいる順番は、心の中の助けてくれそうな人ランキングだと思うのだが。
窪田と数志は、どちらもいまいち、助けてくれそうにないので、順番が何度も入れ替わっていた。



