というわけで、結婚してください!

 尊が、
「俺か?
 俺は――」
と少し恥ずかしそうに咳払いした。

 尊さんも私と会ってたなんて。

 ……いや、征さんとは、会ってはいないようなんだが、と思いながら、鈴は固唾を呑んで、話し始める尊を見守っていた。

「お前たちの結納があった日。
 俺も同じホテルで会議があったんだ。

 ミーティングルームから下りてきたとき、廊下のガラス越しに、たまたま、目に入った。

 庭を歩いているお前たちが。

 親や仲人らしき人影は少し離れたところを歩いていて。

 鈴はそれより手前に居たけど、やっぱり遠くて、顔はよく見えなかったな。

 一番近くに居た征が鈴に背を向けるようにして立っているのが見えた。

 征の顔はこちらを向いていたんだが、笑いをこらえているようだった。

 どうも鈴がスマホを手になにか言っていて、征はそれを聞いて、吹き出しそうになっているみたいだった。

 あの征にあんな顔をさせる女なんて、どんな女なんだろうな、とずっと気になってたんだ――」

 沈黙があった。