遅くなったな、と思いながら、征はビルの下で腕時計を見た。
そろそろ迎えのものが来るからと言って、なんとか抜け出してきたのだ。
こんなに長居をする予定ではなかったのに。
今までのように、するっと抜けられない。
清白の跡継ぎとなったからだ。
……今までは、めんどくさいことは全部、尊が引き受けてくれてたからな、と征は思う。
自分なりに大変だと思っていたが、尊を追いやり、後釜に座ってからわかった。
金も地位も手に入れると、それなりの雑事がついてくると言うことが。
今まで自分が居た立場でも大変ではあったのだが、No. 1とNo.2では、此処までの隔たりがあったのか、と今、実感しているところだった。
あいつ、ぼうっと、こなしてたからな、と尊を思ったとき、ようやく、家の車が来て、ほっとする。
すぐに車が来なかったので、見送りに出た秋津の若い従業員が落ち着かなげに気を使ってくれていたからだ。



