というわけで、結婚してください!

「待て」
と電話の終わった尊が、征の後ろ頭をスマホの角で小突く。

 それ、結構痛いです……と思う鈴の前で、尊が言った。

「征。
 お前が跡継ぎになろうと思ったのは、鈴のことだけが原因じゃないだろう。

 お前の母親がうるさいからだ。

 だから、会社はお前にくれてやる。
 その代わり、鈴は自由にしてやれ」

「お前に俺と鈴とのことに口を出す権利があると思ってるのかっ」
と征が怒鳴り出す。

 ま、確かに……とつい、鈴は思ってしまった。

 誘拐犯――。

 でなければ、鈴の義理の兄、という立場の人間が言うべきセリフではない。

「鈴はちゃんと式を挙げた俺の嫁だぞ!?」

「まだ途中だっただろうがっ。

 第一、鈴はもう三日も俺が連れ歩いてるんだぞっ。

 鈴とは、俺の方がお前より関係が深いはずだ。

 なあ、鈴っ?」

 いやあ、犬じゃないんで、私。
 三日一緒に居たら、恩を忘れなかったり、懐いたりするわけではないんですが、と思いはしたが。

 尊と離れがたいのは確かだった。