「今日休みだから
晩御飯何か作るね」


「チキンカツがいいな」


「いいよ!」


「オレバイトだから
6時ごろには帰ると思うから」


土日だけアルバイトをしているオレは
休みの萌香を残して家を出る。


今日はなんだか
休みたい気分
でもバイト先に迷惑をかけられないから
我慢して出かけないと。


「萌香萌香」
萌香を呼んだ。


「うん?何?」


「来て来て」
手招きをして
チュッして欲しい態度を見せた。


「何?」
判ってるくせにわからないふり。


「行ってらっしゃいのチュッ」


「バカなこと言ってないで
さっさと行ってらっしゃい
気をつけてね」


追っ払うかのように
手を振る萌香をグッと引き寄せた。
「自分もしたいくせに」
と 唇を奪った。


自分から提案した恋人ごっこ。


本当はちゃんと告白して
気持ちを伝えないといけないのに
素直になれない。


もし断られたら?
それが脳裏に過ぎる。


そんなグズグズした性格のはずじゃないのに
萌香の前ではそうなってしまう。


今日!今日こそは
ちゃんと気持ちを伝えよう。


そう思って家を出た。


「頑張ってね」


「うん」


これが最後になるとは
思ってもいなかった。