そういえば、と廊下からする二人の喧嘩口調の声を聞きながら思い出した。
二人がもうすぐ1年記念日だったことに。
莉奈は惚気る事を滅多にしないけど、彼氏のことが大好きというのが一緒にいて伝わってくる。
休み時間、廊下に平松君が通るたびに視線を送っているし、連絡も毎日とっているし、週に1回一緒に帰る日はいつも早歩きで駐輪場に向かっている。
そんな莉奈を間近で見てきた。
いいなー・・・。いつか私も、誰かを大好きになって、その人の事しか考えられない気持ちになれる日がくるのかな。
「・・・・・・・・・はぁ、」
駄目だ、私の青春終わってる。
もちろん恋だけが青春の全てとは言わないけど、やっぱり莉奈達を見てると羨ましくならないわけがない。
(すきなひと、か~・・・)
なんて心の中で呟いてみたものの、浮かび上がる人物像が誰一人といない事に虚しさを覚える。
本日二度目の小さく呟いた溜息は「おーい、大地」という声にかき消されてしまった。



