妻がもう少し母親らしい性格なら安心してエナを任せられるが、まだ小学生のエナの前で平気でタバコを吸い、食事は1週間インスタント食品で済ますこともある。更には、バーに入り浸り、鋭太郎が仕事でエナが1人で留守番をしている時に酔っ払って帰ってくる事も多々ある妻。

高校生以上ならまだしも、小学校低学年の娘にはもっと栄養と規則正しい生活が必要だと鋭太郎は思っていた。

こんな妻なら親権を勝ち取るのは容易いと周りの者は思うかもしれない。

だが、妻の実家は所謂金持ちで、妻の両親も健康に生きている。
その上唯一の女の子の孫であるエナを2人とも溺愛しているのだ。

一方、鋭太郎はごく普通の家に育った身で、両親は既に他界している。
その上兄弟もいない。
経済面では明らかに妻の方が有利なのだ。
それに、これから娘が高学年や中学生になった時、その時はどうしても父親より母親と一緒に暮らしたいだろうと鋭太郎は思い悩んでいた。