持ち前の地味さが幸いして認知度が低い私は、ひとたび教室から離れてしまえば"水瀬くんの彼女の一ノ瀬心和"だと気付かれない。 あてもなく廊下を歩けば歩くほどいつも通りの日常が戻ってくるような気がしてホッと胸を撫で下ろした、その時。 「え、わ!」 スカートのポケットの中で震えたスマホ。 取り出して確認すると"水瀬蒼"の文字。しかも電話。