今、母さんって言った…よね?
蒼くんの影から改めて視線を送ると、その人はまるで嘲笑するように顔を歪めた。
「言ってよって!ここ私が買った家なのに?なんでいちいち言わなきゃいけないのよ」
「そういう話じゃなくて、たまにしか帰ってこない人が急に来ると誰だってびっくりするでしょ。こっちにも予定あったりするし」
「へぇ、予定?」
「っ、」
黒いアイラインで縁取られた瞳に捉えられて、反射的に蒼くんの背中に隠れてしまったけど。
「…」
振り向かずに私の手を握ってくれた後ろ手が、「大丈夫」って言ってくれたような気がして、少しだけ力を抜くことが出来た。

