「あんま馬鹿言ってると殺すけど」
紫乃のペースに乗せられてあわあわする心和の顔が浮かぶ。
心和はすぐ顔に出るから嘘はつけないだろうし、面白がった紫乃に引っ掻き回されるのがオチだ。
…それに、何よりも。
「なんだよ。蒼がそんなにハマるっていうからどんなんかと思っただけじゃん?」
「…そんなの、俺だけが知ってればいいよ」
頭に手を置くだけで赤くなる顔とか、手を繋げばおずおずと握り返してくる指先とか。
『…蒼くんになら食べられても、いい、よ……?』
今にも消えてしまいそうなか細い声でなのに、じっと見上げてくる潤んだ瞳とか。
俺以外誰も、知らなくていい。

