「ほらぁ、早く、早くぅ、始まっちゃうよ!」

そう、彼女が放った一言がずっと離れない。




ある日、街頭でフト見かけた張り紙。
都会で人気を博していた劇団がこの街に来るポスターだった。


「ねぇねぇ、キャッツだって!」

「ほぉ、T.S.エリオットのミュージカルか」

「そう、あの噂の!」

「でも、チケットなんて取れないぞ」

「大丈夫だって!行こうよ!取るよ!」


もちろんチケットは即完売だった。
しかし学校をずる休みしてまで、チケットを彼女は掴んだ。
彼女のそんな押しに負け、いや一緒に行けたらと確かに思っていた。


そんな、中学生の頃の話。