ギイ、と扉を開く。
スタッフの方は会釈して宴も半ばで去ろうとする私を止めることも無く不思議顔ではあるが送り出してくれる。
もしかしたら、途中抜けというのは意外とあるのかもしれない。

披露宴会場内の喧騒から抜けると、ロビーの静かな空間。
もう少しだけ、待って。
揺れる視界に自分を律する。
ここで泣くなんて、感動の涙と思われるなんて癪だ。
きゅっと眉間に力をいれる。
足を早めてエントランスを抜け、重厚な扉を開くと目の前に飛び込んできたのは青い空と白い雲。

ようやく私の頬を涙が伝うことを受け入れた。
大丈夫、外は明るい。
きっと世界は明るい。

そのまま外の世界へ足を踏み出す。
ほんの少しの痛みを抱えて歩く。
涙を流しながら歩く私を、道行く人は気にすることなく歩いていくが、そんな冷たさが今はありがたかった。
今日は人々が愛を確かめ合う日。
勇気を出す日。
破れた恋も、実る恋も、大きな空は見守っている。
すれ違うカップルは、手を繋ぎ、その顔は幸せに満ちている。

そんな中を今は私ひとりで歩く。
ヒールの音を鳴らして歩く。
着飾った服に負けないように、背筋を伸ばしてしっかりと。

その姿を、輝く太陽だけが見ていた。