素敵な協議離婚~あなたが恋するメイドの私~

5月4日③

料理は前菜が運ばれてきたところだったが、ランスも私も手を付けずにただ、お互いの目を見つめている。
いや、見つめ合っているんじゃなくて、睨み合っていたのだ。
そこには、知らない人が見れば絶対修羅場だと思うほどの不穏な空気が流れている。

「なんで私がおかしいの!?」

自身の考えを否定され、怒りのあまり少し声が大きくなった。

「メリー、君はメグとは別の人間だと言うが、メグは君だ。オレの中にだって違うオレがいる。誰だっていろんな自分を抱えて生きてるんだ。メグは君の一部、違う人間じゃない!」

「こじつけだわ、そんなの……」

「そう思うならそれでもいい。だが、オレはメグが君じゃなかったら、メグを好きにはならなかった。メグは……オレが君に一目惚れした時の……あの時のメリーだったんだ……」

「演劇祭の……時の?」

「フレドがあの写真を見せたんだろ?隠しておいたのに……そう、演劇祭の時、今も忘れられないよ。君は少し高い声で、笑ったり、怒ったり、叫んだり。そして、主人役の男を励まして……メグと似てるだろ?」

「………………………」

「つまり、だ。メリーがいなければメグを好きになることもなかった。メリーがいたから……。過去なんかに出来るはずはないんだよ。なるはずはないんだ」

さっきからウェイターが料理の進行状況をチェックしに何度も覗いている。
ランスは話に夢中で全然気付いていないけど、その話を受け入れ難い私は、ウェイターをチラチラと見て気を逸らしていた。

「メリー?聞いてる??」

「ええ。聞いてるわ。でも、あの、お料理が進まないとあの人が困るみたいよ」

と、ウェイターを視線で指す。

ランスは、はぁーと大きくため息をつくと仕方なく料理に手をつけ始める。
それを見て私もナイフとフォークを手に取った。
正直、ホッとしている。
舌戦でランスに勝てるとは思わない。
実際今もかなり押されていたし、途中からそうなのかもしれないと思い始めてしまっていたのだ。
あのままだったら、ランスの言うことを受け入れてしまったかもしれない。

「メリー、オレは君を絶対に諦めない」

「え?な………に?」

「また、誘いに行くよ」

何か今、さらっと恐ろしいことを言ったわよね……。

それからランスは何事もなかったように話の話題を変え、ジョークを交えながら最近担当した訴訟の案件の溢れ話を始めた。
話の内容が変わったことでホッとした私は、それに引き込まれるように彼の話術の中に取り込まれていった。