素敵な協議離婚~あなたが恋するメイドの私~

5月4日②

ランスに連れて行かれたのは、ドレスコードのありそうなフレンチレストランだった。

良かったわ、オープニングセレモニーの為に、無難なスーツを着ていて。
それにしても、きっとこのお店、予約がないと入れないわよね?
予め予約しておいたのかしら?
まさか、私と来るためとかっていう冗談言わないわよね?

「どうかな、この店?君と来るために予約しておいたんだが」

………冗談……じゃないの!?

「……とても高そうなお店ね……」

「そんなことないさ。ほら、なんでも好きなもの頼むといいよ」

「あ、いや、……お任せするわ……」

困ったわ……ここ、絶対高いわよね。
お金足りるかしら。
まぁ、いざとなったらカードね、うん。

「お金の心配はいらないから」

なっ!?なんで考えてることバレてるの!?
顔に出てたかしら………

「何のこと??そんな心配してないわよ!」

「ふーん」

ランスはメニューを見て、慣れたように一番高いコース料理を注文し、次にソムリエを呼ぶとなんだか高そうなワインを持って来させた。

「これは個展のお祝いだ。遠慮なく空けてくれ」

「高いんでしょ?申し訳ないわ」

「構わない。オレがそうしたいんだ」

「……じゃ、遠慮なく」

ワインはグラスの中で、液体になったルビーのようにキラキラ輝いている。
一口含むと、重厚な香りが口一杯に広がり、そしてまろやかな味わいに変わっていった。

「まぁ!これ、とても美味しいのね」

私が目を丸くして感動しているのが何故か面白かったらしく、ランスは指を組んだままクスッと笑った。

「こうやって、君と食事に出掛けたり、もっといろいろすれば良かった」

「今更じゃないの……もう終わったことよ。忘れましょ」

「そう思ったんだよ。でも無理だった」

「…………え?」

ランスはスーツの内ポケットから、一枚の紙を取り出すと、それを表に向けて私に見せる。
それは、レオナルドが撮ったあの病院での二人の写真。

「ずっと、君だったんだな、メリー。支えてくれたのも、勇気づけてくれたのも全部」

「ランス………違うのよ。感謝される筋合いはないの。今だから言うけど、あれはフレドと計画したことよ。私は慰謝料がもらえないと困るし、フレドはあなたを助けたかった。私は私の為にやったのよ。それに結果的にあなたを騙すことになったんだから、本当は恨んでもいいくらいだわ」

胸の内をぶちまけて、私は心の靄はスーッと晴れていった。
例えこれで恨まれても、真実を隠しているよりはずっといい。

「恨んだのは最初の1週間。メグが君だとわかってからは、ただ申し訳ないって思ってた。随分酷いことを言ったなと……そして、死ぬほど悩んだ後わかったんだ。オレは君しか愛せないって……」

「……は?……ランス、あなたはメグに好きだと言ったわよね?」

「ああ、言った」

「それなのに私にそんなことを言うの?
おかしいわよ……どうかしてる……」

「どうかしてるのは君だ」

強い口調で言い切るランスを、私は強く睨み付けた。