11月6日(sideランス)
それから仕事に復帰するのに時間はかからなかった。
復帰すると、それまでの顧客は一気に戻ってきて何も考える時間がないくらい忙しくなった。
今のオレにはその忙しさがありがたい。
正直メグのことも、メリーのことももう思い出したくないと思っていた。
新しく車を買い換え、退院後初めて病院へ診察に向かう。
あまり、メグとの思い出のある場所には行きたくなかったがこればかりはしょうがない。
彼女の思い出が強く残るあの家にも、暫く帰ってはいなかった。
午後の病院は、今日も患者達の和やかな声で溢れていて、それがどうしようもなくオレの癇に障る。
『この病院は凄く開放的ですね!皆さん、とても楽しそうですよ』
うるさい。
『ランス様も入院、楽しめるといいですね』
だまれ!!
頭の中や心の中、体のいろんなところからメグの声が聞こえて来るようで、オレは思わず近くの壁を力任せに殴った。
手に感じる痛みが幻聴を消していき、漸く落ち着いたオレは、ふと目の端に入った掲示板に視線を移した。
各科からのお知らせの横に、何故か場違いな写真が張られている。
写っていたのは目を包帯で覆われた男と、そして…………。
メ………リー…………?
長く美しいブロンドに、理性的な緑の瞳。
演劇祭で見たメイド役の時のような格好をして、オレのすぐ横で笑っている。
「なんだ………これ……どういうことだ……」
オレはメグと写真を撮った。
でも、写っているのはメリー……。
ああ………ああ………そうなのか………。
最初から。
診察時間は過ぎていたが、もうそれどころではない。
オレは写真を掲示板からむしりとると、急いでオフィスに向かう。
そして、フレドの部屋に飛び込むと思い切り胸ぐらを掴んだ。
「おい!メグは……あれはメリーだったんだな!?」
「…………僕は何も言えない」
「は!?それは………そういう契約か……メグに関して一言も喋らないっていう……」
「…………………」
「まぁいい、それは肯定と取る。それで?彼女はどこだ??」
「どっちの彼女だ?」
「メリーだ!!メリーに決まってるだろう!」
「兄貴の好きなのはメグじゃないのか?」
「同じだ!」
「同じじゃない!メグとメリーは違う。少なくともメリーはそう思ってる。ああ、もうほんとは契約違反なんだけどなぁ……メリーはね、兄貴とやり直す気はないようだよ」
「………理由は?」
「さぁ?そんなこと僕は知らない。ただ彼女が言ってたのは、兄貴が好きなのはメグで、メリーは過去なんだそうだ」
「過去だ、なんて……」
そう呟いて、オレはメグに言った言葉を思い出していた。
『たぶんどこかで会っても、普通に話せる気がするよ。どうした?心配してるのか?大丈夫だよ、オレが好きなのはメグだから』
メリーが過去だなんて今は思わない。
だが、あの時は……確かにそう思った。
オレは、メリーの前でメリーを否定したんだ。
一体どんな気持ちで、オレの言葉を聞いていた?
どんな顔でオレの側にいた?
オレを導いてくれたとき、支えてくれたとき、どんな思いで…………。
「僕だって、出来ることなら二人がやり直してくれればいいと思ってるよ。でも、メリーの気持ちを思うと……」
「嫌になるな………全く。オレは、こんなに最低な男だったか?」
一度目は、ジェラルドに騙されメリーを避けた。
二度目は、メグにメリーのことを打ち明け、メリーを過去にした。
三度目は、メグに好きだといい、完全にメリーを消した。
そう少なくとも三度、オレはメリーを傷付けたんだ。
「兄貴………お互いにもう忘れた方がいいんじゃないかな。僕はもう、二人が傷つくのを見たくない」
そうかもしれない。
またメリーを傷付けるくらいなら、いっそ忘れる努力をした方が賢明だろう。
そうだ………その方が、きっといいんだ。
それから仕事に復帰するのに時間はかからなかった。
復帰すると、それまでの顧客は一気に戻ってきて何も考える時間がないくらい忙しくなった。
今のオレにはその忙しさがありがたい。
正直メグのことも、メリーのことももう思い出したくないと思っていた。
新しく車を買い換え、退院後初めて病院へ診察に向かう。
あまり、メグとの思い出のある場所には行きたくなかったがこればかりはしょうがない。
彼女の思い出が強く残るあの家にも、暫く帰ってはいなかった。
午後の病院は、今日も患者達の和やかな声で溢れていて、それがどうしようもなくオレの癇に障る。
『この病院は凄く開放的ですね!皆さん、とても楽しそうですよ』
うるさい。
『ランス様も入院、楽しめるといいですね』
だまれ!!
頭の中や心の中、体のいろんなところからメグの声が聞こえて来るようで、オレは思わず近くの壁を力任せに殴った。
手に感じる痛みが幻聴を消していき、漸く落ち着いたオレは、ふと目の端に入った掲示板に視線を移した。
各科からのお知らせの横に、何故か場違いな写真が張られている。
写っていたのは目を包帯で覆われた男と、そして…………。
メ………リー…………?
長く美しいブロンドに、理性的な緑の瞳。
演劇祭で見たメイド役の時のような格好をして、オレのすぐ横で笑っている。
「なんだ………これ……どういうことだ……」
オレはメグと写真を撮った。
でも、写っているのはメリー……。
ああ………ああ………そうなのか………。
最初から。
診察時間は過ぎていたが、もうそれどころではない。
オレは写真を掲示板からむしりとると、急いでオフィスに向かう。
そして、フレドの部屋に飛び込むと思い切り胸ぐらを掴んだ。
「おい!メグは……あれはメリーだったんだな!?」
「…………僕は何も言えない」
「は!?それは………そういう契約か……メグに関して一言も喋らないっていう……」
「…………………」
「まぁいい、それは肯定と取る。それで?彼女はどこだ??」
「どっちの彼女だ?」
「メリーだ!!メリーに決まってるだろう!」
「兄貴の好きなのはメグじゃないのか?」
「同じだ!」
「同じじゃない!メグとメリーは違う。少なくともメリーはそう思ってる。ああ、もうほんとは契約違反なんだけどなぁ……メリーはね、兄貴とやり直す気はないようだよ」
「………理由は?」
「さぁ?そんなこと僕は知らない。ただ彼女が言ってたのは、兄貴が好きなのはメグで、メリーは過去なんだそうだ」
「過去だ、なんて……」
そう呟いて、オレはメグに言った言葉を思い出していた。
『たぶんどこかで会っても、普通に話せる気がするよ。どうした?心配してるのか?大丈夫だよ、オレが好きなのはメグだから』
メリーが過去だなんて今は思わない。
だが、あの時は……確かにそう思った。
オレは、メリーの前でメリーを否定したんだ。
一体どんな気持ちで、オレの言葉を聞いていた?
どんな顔でオレの側にいた?
オレを導いてくれたとき、支えてくれたとき、どんな思いで…………。
「僕だって、出来ることなら二人がやり直してくれればいいと思ってるよ。でも、メリーの気持ちを思うと……」
「嫌になるな………全く。オレは、こんなに最低な男だったか?」
一度目は、ジェラルドに騙されメリーを避けた。
二度目は、メグにメリーのことを打ち明け、メリーを過去にした。
三度目は、メグに好きだといい、完全にメリーを消した。
そう少なくとも三度、オレはメリーを傷付けたんだ。
「兄貴………お互いにもう忘れた方がいいんじゃないかな。僕はもう、二人が傷つくのを見たくない」
そうかもしれない。
またメリーを傷付けるくらいなら、いっそ忘れる努力をした方が賢明だろう。
そうだ………その方が、きっといいんだ。

