10月20日①
手術までの3日間は驚くらいあっさりと過ぎていき、そして当日、ランスの荷物をまとめ終えた私は、今まで踏み込むことのなかった私室に入った。
ここは悲しみと、憎しみに溢れている。
ランスが帰ってこなくなった時、どうしてだろうと悩み、結局なんの答えも出せずにただひたすら泣いた。
そのベッドで、窓際で、ドレッサーの前で、声も出さずに泣いた。
小さなキャビネットの上には、伏せられたままの結婚式の写真が3年前から埃を被った状態でそこにある。
その時の彼はすごく優しくて、自分はこのまま幸せになるんだと信じて疑わなかった。
伏せられた写真を3年ぶりにちゃんと飾ってみると、合成写真のようにも見えて、なんだか可笑しくなって笑ってしまう。
この写真を撮ったすぐあと、私の自尊心は粉々になり、やがてたくさんの趣味に逃げ、全てを彼のせいにすることで、かろうじて自分の形を保つことが出来ていた。
今更、3年前の彼の想いを聞いても、それでこの粉々になった心が埋まることはない。
しかも、彼はメグに会って「彼女」に恋をし、メリーのことをあっさりと過去に変えた。
彼は漸く過去から抜け出して、新しい未来を見つけ歩きだそうとし始めているのに。
私は………メリーだけが過去に取り残され、そこから抜け出せずにもがいている………一体……何を望んでいるのかもわからないままに。
メリーとして彼とやり直す選択肢はない。
メグとして彼と暮らすことも出来ない。
メグとしてじゃなく、メリーとしてランスの前に出、『愛していた』と言わせればこの心は解放されるのか?
私もランスのように過去を忘れ、本当の新しい未来を見つけることが出来るのだろうか?
過去を、過去としてこれからを生きることが出来るのかも…………。
私は我に返ってハッとした。
ぐちゃぐちゃだ………もう、何を考えているのか自分でも良くわからない。
心の奥の蓋が外れて、思ってもみなかった考えが次から次へと浮かんでくるのは、きっとこの部屋のせいだ。
この部屋は弱い私そのものだから……。
「メグ??どこにいるんだー?」
階下からランスの声が響き、私は慌てて部屋を出る。
そして足音を立てないようにそっと階段を降りると、そこからわざと音を立てて居間のランスの声に答えた。
「ここです!荷物を玄関に運んでました。何か御用ですか?ランス様」
「あ、いや、どこにいるかと思っただけだ。見えないと不安になって……。足音もしなかったから」
「申し訳ありません。では、これからはもっと自己主張しながら歩くことに致します!」
不安そうだったランスは、すぐに口角を上げ、鷹揚に笑った。
「そうしてくれ、どこにいてもわかるように」
「はい」
私は明るく返事をし、大きな足音を響かせてランスに近寄り手を取って玄関まで誘導する。
その手をしっかりと握り返したランスは、口元を緩ませて私を見た。
手術までの3日間は驚くらいあっさりと過ぎていき、そして当日、ランスの荷物をまとめ終えた私は、今まで踏み込むことのなかった私室に入った。
ここは悲しみと、憎しみに溢れている。
ランスが帰ってこなくなった時、どうしてだろうと悩み、結局なんの答えも出せずにただひたすら泣いた。
そのベッドで、窓際で、ドレッサーの前で、声も出さずに泣いた。
小さなキャビネットの上には、伏せられたままの結婚式の写真が3年前から埃を被った状態でそこにある。
その時の彼はすごく優しくて、自分はこのまま幸せになるんだと信じて疑わなかった。
伏せられた写真を3年ぶりにちゃんと飾ってみると、合成写真のようにも見えて、なんだか可笑しくなって笑ってしまう。
この写真を撮ったすぐあと、私の自尊心は粉々になり、やがてたくさんの趣味に逃げ、全てを彼のせいにすることで、かろうじて自分の形を保つことが出来ていた。
今更、3年前の彼の想いを聞いても、それでこの粉々になった心が埋まることはない。
しかも、彼はメグに会って「彼女」に恋をし、メリーのことをあっさりと過去に変えた。
彼は漸く過去から抜け出して、新しい未来を見つけ歩きだそうとし始めているのに。
私は………メリーだけが過去に取り残され、そこから抜け出せずにもがいている………一体……何を望んでいるのかもわからないままに。
メリーとして彼とやり直す選択肢はない。
メグとして彼と暮らすことも出来ない。
メグとしてじゃなく、メリーとしてランスの前に出、『愛していた』と言わせればこの心は解放されるのか?
私もランスのように過去を忘れ、本当の新しい未来を見つけることが出来るのだろうか?
過去を、過去としてこれからを生きることが出来るのかも…………。
私は我に返ってハッとした。
ぐちゃぐちゃだ………もう、何を考えているのか自分でも良くわからない。
心の奥の蓋が外れて、思ってもみなかった考えが次から次へと浮かんでくるのは、きっとこの部屋のせいだ。
この部屋は弱い私そのものだから……。
「メグ??どこにいるんだー?」
階下からランスの声が響き、私は慌てて部屋を出る。
そして足音を立てないようにそっと階段を降りると、そこからわざと音を立てて居間のランスの声に答えた。
「ここです!荷物を玄関に運んでました。何か御用ですか?ランス様」
「あ、いや、どこにいるかと思っただけだ。見えないと不安になって……。足音もしなかったから」
「申し訳ありません。では、これからはもっと自己主張しながら歩くことに致します!」
不安そうだったランスは、すぐに口角を上げ、鷹揚に笑った。
「そうしてくれ、どこにいてもわかるように」
「はい」
私は明るく返事をし、大きな足音を響かせてランスに近寄り手を取って玄関まで誘導する。
その手をしっかりと握り返したランスは、口元を緩ませて私を見た。

