10月16日
手術を決めてからのランスの行動はとても早く、病院の予約を大幅に繰り上げ、担当医にその旨を告げると、その日のうちに手術の日を決めた。
担当医は目を剥いて驚いていたが、漸く重い腰を上げたランスと、重い腰を上げさせた私に対し、懇切丁寧に手術の説明をしてくれた。
「明後日手術をしてから、約一週間は包帯が取れません。ですから完治はおよそ9日後となりますね」
「わかりました、あの、手術後一週間は入院になるんでしょうか?」
「ええ、そうです」
「なら、付き添いは可能ですか?彼女に側にいてもらいたいんですが………」
ランスは肩に置かれた私の手を握り、こちらに顔を向ける。
「もちろん構いませんよ。そうしてもらう方が治りが早そうだ」
担当医は目を細め、ランスと私とを交互に見て溢れるような暖かい笑顔で言ったが、私はその笑顔が真っ直ぐに見れなかった。
診察室を出て中庭に入ると、午後の柔らかな陽射しの中で、病院内の患者さん達が思い思いの趣味に耽る光景が目に留まった。
車イスの老人は、看護師と楽しそうに本の話をし、左手にギプスを巻いた男の子は、右手で元気に看護師とバドミントンをしている。
女性達は庭に輪になって座り編み物や刺繍をし、その側で小さな女の子がシャボン玉をいくつも作り出していた。
「この病院は凄く開放的ですね!皆さん、とても楽しそうですよ」
「そうなのか?」
「ええ。ランス様も入院、楽しめるといいですね」
入院を楽しむとか、あまり言わない言葉だなと思ったけど、どうせなら楽しいに越したことはないわよね。
「……………オレは、メグがいるだけで……」
「は?何ですか?」
聞こえていたけど、聞こえない振りをしておく。
「な、何でもない」
ランスがそういって俯いた瞬間、パシャという音が私達のすぐ側から聞こえた。
その音の方を見ると、カメラを構えた男性患者がにこやかに笑ってこちらを見ている。
「ごめんなさい、あなた達の雰囲気がとても良かったもので、ついシャッターを切ってしまいました。ご迷惑でしたか?」
男性は謝りながらも、カメラを構えたまま、ファインダーから目を離そうとはしない。
同業者かしら!?
私は少し訝しげに男性を見たが、ランスは言われた言葉が嬉しかったのか気を良くして男性に話しかけた。
「とんでもない!カメラマンの方ですか?」
「ははっ、まさか、単なる趣味ですよ」
そう男性は言ったが、そのカメラは結構なお値段のものだったのを私は知っている。
「良かったらお二人の写真を撮らせて貰えませんか?」
「もちろん!お願いします!ね、メグ、構わないよね」
こんな嬉しそうなランスに、嫌だとは言えない……。
それにどうせ、この男性もすぐに退院するのだろうし、写真をランスが見ることはないはず。
「ええ、お願いします」
「あ、奥さん!マスクは外してね!美人が台無しだから」
奥さんじゃないっ!
と反論しようとした私を、違うところに反応したランスの嬉しそうな声が止めた。
「美人かぁ!それは楽しみだな」
それは世間一般でいうお世辞というものよ!
私は仕方なくマスクを外し、ランスの横に寄り添うとカメラに向かってにっこりと微笑んだ。
「はーい、じゃあ、とりまーす」
パシャ!
軽いシャッター音が響き、男性は満面の笑みでファインダーから目を離す。
これは……改心の出来?!
男性のその笑みは、私がうまくとれた時の顔と似ている気がした。
「ありがとう、また会えたら写真をお渡ししますね!」
そうね、会えたらね。
「ああ、楽しみにしているよ」
男性は足取りも軽く病院内に消えていき、私達はそのまま、病院を後にした。
手術を決めてからのランスの行動はとても早く、病院の予約を大幅に繰り上げ、担当医にその旨を告げると、その日のうちに手術の日を決めた。
担当医は目を剥いて驚いていたが、漸く重い腰を上げたランスと、重い腰を上げさせた私に対し、懇切丁寧に手術の説明をしてくれた。
「明後日手術をしてから、約一週間は包帯が取れません。ですから完治はおよそ9日後となりますね」
「わかりました、あの、手術後一週間は入院になるんでしょうか?」
「ええ、そうです」
「なら、付き添いは可能ですか?彼女に側にいてもらいたいんですが………」
ランスは肩に置かれた私の手を握り、こちらに顔を向ける。
「もちろん構いませんよ。そうしてもらう方が治りが早そうだ」
担当医は目を細め、ランスと私とを交互に見て溢れるような暖かい笑顔で言ったが、私はその笑顔が真っ直ぐに見れなかった。
診察室を出て中庭に入ると、午後の柔らかな陽射しの中で、病院内の患者さん達が思い思いの趣味に耽る光景が目に留まった。
車イスの老人は、看護師と楽しそうに本の話をし、左手にギプスを巻いた男の子は、右手で元気に看護師とバドミントンをしている。
女性達は庭に輪になって座り編み物や刺繍をし、その側で小さな女の子がシャボン玉をいくつも作り出していた。
「この病院は凄く開放的ですね!皆さん、とても楽しそうですよ」
「そうなのか?」
「ええ。ランス様も入院、楽しめるといいですね」
入院を楽しむとか、あまり言わない言葉だなと思ったけど、どうせなら楽しいに越したことはないわよね。
「……………オレは、メグがいるだけで……」
「は?何ですか?」
聞こえていたけど、聞こえない振りをしておく。
「な、何でもない」
ランスがそういって俯いた瞬間、パシャという音が私達のすぐ側から聞こえた。
その音の方を見ると、カメラを構えた男性患者がにこやかに笑ってこちらを見ている。
「ごめんなさい、あなた達の雰囲気がとても良かったもので、ついシャッターを切ってしまいました。ご迷惑でしたか?」
男性は謝りながらも、カメラを構えたまま、ファインダーから目を離そうとはしない。
同業者かしら!?
私は少し訝しげに男性を見たが、ランスは言われた言葉が嬉しかったのか気を良くして男性に話しかけた。
「とんでもない!カメラマンの方ですか?」
「ははっ、まさか、単なる趣味ですよ」
そう男性は言ったが、そのカメラは結構なお値段のものだったのを私は知っている。
「良かったらお二人の写真を撮らせて貰えませんか?」
「もちろん!お願いします!ね、メグ、構わないよね」
こんな嬉しそうなランスに、嫌だとは言えない……。
それにどうせ、この男性もすぐに退院するのだろうし、写真をランスが見ることはないはず。
「ええ、お願いします」
「あ、奥さん!マスクは外してね!美人が台無しだから」
奥さんじゃないっ!
と反論しようとした私を、違うところに反応したランスの嬉しそうな声が止めた。
「美人かぁ!それは楽しみだな」
それは世間一般でいうお世辞というものよ!
私は仕方なくマスクを外し、ランスの横に寄り添うとカメラに向かってにっこりと微笑んだ。
「はーい、じゃあ、とりまーす」
パシャ!
軽いシャッター音が響き、男性は満面の笑みでファインダーから目を離す。
これは……改心の出来?!
男性のその笑みは、私がうまくとれた時の顔と似ている気がした。
「ありがとう、また会えたら写真をお渡ししますね!」
そうね、会えたらね。
「ああ、楽しみにしているよ」
男性は足取りも軽く病院内に消えていき、私達はそのまま、病院を後にした。

