素敵な協議離婚~あなたが恋するメイドの私~

10月11日③

「メグ?あの………どうかしたのか?」

見えなくてもわかるくらいの私の憤慨ぶりに、さすがのランスも尻込みしたようだ。

「い、いえ、少し……あの、ランス様が気の毒で……」

気の毒なのは私だ!
あれ、待って?そう言えば、彼にも愛人がいたんじゃなかった?
なんか私が相当な悪女みたいだけど、ランスだってそうじゃない!
そう思うともう黙ってはいられなかった。

「あの、ランス様にも愛人がいたと、フレド様から聞いてますが?」

もちろんフレドからは何も聞いてないし、知らないと言っていた。
でも、こう聞かないとメグが愛人の件を知ってるのがおかしいものね。

「愛人?………ああ、それはきっとフレドが勘違いしてる」

「勘違い?」

「オレは、オリヴィアがずっとおかしな動きをしていたのを見張ってた。だからいつも側において監視してたんだ。一緒にいたからそう思ったんだろう」

ん?本人が言ってましたけど?

「フレド様はオリヴィア本人から愛人だと聞いたとか」

「………言い寄られてたのは確かだよ。でも誓ってそういった関係ではない。信じて、メグ」

彼は私の手をギュッと強く握った。

なんかいろいろよくわからないことになってきた。
だけど、今更あの時ああしていればと考えるのはバカらしい。
結局はこうなってしまったのだから、過ぎたことなのだ。
私の3年も彼の3年も戻っては来ない。


「メグ、オレはね、こんな自分の情けない話を誰かにするなんて思わなかった。ずっと妻に愛されなかったと嘆きながら生きるんだと思ってた。君に会うまでは……」

「へ?」

なんだか雲行きが怪しい。
怒りに満ちていた私の心は、何かこの甘ったるい空気が充満してきたガゼボの中で、いいようのない不安に押し潰されそうになっていた。

「メグ、オレは君に惹かれている」

やーん、もう、勘弁してよー。

「ランス様、それはきっと気のせいです。だって、私の顔も見たことないし、出会って一週間ほどしかたってませんよ。辛いときは誰かにすがりたくなるじゃないですか!それですよ」

私は一生懸命否定したが、ランスは引こうとはしなかった。

「君と初めて会った時、酷く恫喝したのにオレを怖がることはなかった。それどころか、猜疑心に凝り固まった心を君は笑い声で溶かしたんだ。それだけで惚れるには十分だろ?メグ、君といると楽しいんだ。どうかオレの側にいて」

案外しつこいわね。
そして、饒舌過ぎて異議を挟む間もない。
いや、待って?
でもこれはチャンスなのでは?
私が側にいるといえば、彼は手術を受けてくれるんじゃないかしら?
どうせ最初から手術が成功したら、雲隠れするつもりだったんだから、これは絶好の機会!